「ぇえ・・・・・・?アプリ落とさなきゃメールつかえないのー?」 ふむ、ずいぶんと悩んでいるようだな。 長き眠りから覚めてみれば、ずいぶんと軟弱そうな小娘ではないか。 我に触れる指など、まったく慣れておらぬ。 さては貴様、時代遅れの二つ折り(きっとあの甲斐の虎がごとき単純かつ鈍重なものに違いない)から我に鞍替えしたのだな。 「あれっ、携帯変えたの!?」 「そうなの!ずっと入荷待ちでさぁ、やっとさっき受け取ってきたとこなんだけど」 「あーこれCM見た!一番新しいやつじゃん!いいないいなぁ、ぅわ薄ッ!」 「でしょでしょ?もう軽くて。携帯の進化ってすごいよね」 「あんたは前の機種使いすぎてただけでしょー?五年くらい使ってなかった?あのでかくてごっついの!」 やはりな、貴様のことなどお見通しだ。 「メアド変わった?教えてよー」 「あぁうん、ちょっとなんか設定とかいるみたいだから、使えるようになったら送るね!」 「うん早めにね?そういうの忘れそうだから。じゃあねー」 「忘れないよぅ、早めに送るから!じゃぁね、また明日」 あれはそなたの駒か?そなたに似て頭の弱そうな顔よ。 「えへへ、羨ましがられちゃった」 ふん、すべて我の計算通り。 「で、メールメール、と。まずアプリ?をどうやったら落とせるのこれ?」 さぁ悩むがよい。 日輪(メーカー)より賜りしこの機能、おいそれと晒す我ではないぞ。 「えっとまずアプリストアか。何それどこにあるの」 ほう、駒の割には理解の早いことよ。だが貴様にアプリストアは見つけられまい。 そうやって徒に我に触れると、 「ぅわ待ち受けに戻った!もーなにこれどうなってんのー」 ほら、言わぬことではない。 「だいたいなんでちゃんとした取扱説明書ついてないのー?何このうっすいスタートガイドって!わけわかんない・・・・・・」 我を理解するは我のみでよいわ。 だいたい、その手のスタートガイドをよく読めばメールくらいは使えるものを。 捨て駒にすらならぬな貴様。 「もー、しょうがないな、聞こ」 何? その手に持っているのは、時代遅れの二つ折り(我の計算どおり)ではないか! 貴様それをまだ解約していないというのか! 待て、どこに電話をしている! 「あーごめんね、ほら昨日言ってた携帯入荷したからもらってきたんだけどさ、まずメールからしてわかんなくて、設定教えてくれない?」 貴様、我を前に他の機種にて電話をかけるとは。 我の計算を、超えると、いうのか。 「ごめんって、だって使えないと困るんだもん」 ・・・・・・ふん。 「――あれ、ちょっと待ってね、なんかさっきはなかった画面がいきなり出て」 いいかげん、貴様のその無様な面は見飽きた。 「あ!『使い方ガイド』だって!ごめんこれ見たらわかりそう!――うん、ごめんって。あとで新しい方から電話するから。ごめんね、じゃあね」 その二つ折りは疾く解約せよ。目障りぞ。 「あ、これねメール設定!よかったぁ、ちゃんと使えそう」 ふん、そうだ。 我を見るならば、そういった顔をしていろ。 さすれば我が機能を使わせてやってもよい。 「よし、メール設定、あと通信設定?あ、そもそも時間設定か。やることいっぱいあるなぁ。がんばろ」 貴様は我の駒ぞ。 我だけを見、我だけに触れればよい。 我のことだけを考えていればよいのだ。
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20120531/シロ@シロソラ |